みんなが寝る前に火の用心を呼び掛ける別府市千代町の住民。古い木造家屋が密集した所や、道路が狭い場所が気に掛かる
「自分たちで守る」
午後9時。別府市南部にある千代町自治会の事務所に30~80代の10人が集まった。拍子木を手に、二手に分かれて出発。「火の用心」。地域を回ると、民家の2階から顔を出した子どもが「ご苦労さまでーす」と声を掛けた。
同自治会では大火から約2週間後の1月26日から、有志が毎晩の夜回りを始めた。「火事を起こしたら最後。自分たちの町は自分たちで守らんとな」と原田耕作会長(83)。もともと住民の仲は良かったが、夜回りで一層きずなが深まった気がするという。
「うちの地区も古い家が密集した所が残っている。人ごとじゃない」―。光町の大火は多くの市民に切実な問題を突き付けた。市消防本部には、住宅用火災警報器の取り付けや古い消火器の交換などの問い合わせが増えている。
戦災を免れた同市は、南部を中心に古い木造家屋が密集する地区があり、過去何度も大火が起きた。そのたびに町の構造的な問題が指摘されてきたが、所有者に大きな負担を強いることから、町並みの変更など抜本的な防火対策は難しい。コミュニティーの力に頼らざるを得ないのが現状だ。
バケツリレーで飛び火による延焼を防いだ末広町住民に触発されたのは、松原町1区の青壮年会。「うちでも練習したい」と計画を練っている。
住民と行政手探り
だが、「中心になってやっているのは高齢者ばかり」との声も聞こえる。立田町自治会は独居老人宅を訪問し、石油ストーブや仏壇のろうそくなどへの注意を呼び掛けている。高齢化率は4割を超え、若い住民は自治会活動に熱心ではない。「いつまで続けられるのか」。日野雅弘会長(75)は不安を感じている。
どうすれば火災に強い町になるのか―。市都市政策課は「個人財産にかかわることで行政が押しつけるわけにはいかない」と“限界”を感じながらも、「住宅不燃化を支援する国の制度などもある。市としてどんな対策が取れるのか。検討を続けたい」。
住民と行政の手探りが続く。
(別府支社取材班)
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