別府市 大火災

被害広げた「町の構造」

[2010年01月15日 10:15]

トタン板で埋め尽くされた火災現場=14日午後2時46分、別府市光町

 全焼27棟、焼失面積2500平方メートル―。別府市南部地区の住宅密集地で13日夜に発生した火災は、鶴見岳から吹き下ろす強風にあおられ、瞬く間に燃え広がった。過去にも幾度となく大火に見舞われた泉都・別府。家屋の古さや町の構造など、被害が拡大しやすい潜在的な弱点があらためて浮き彫りになった。

木造家屋が密集
 出火から一夜明けた火災現場は、黒焦げになった木材と、無数のトタン板に埋め尽くされていた。
 「この一帯は、終戦直後に建てられた古い木造家屋が密集する地域。風がある日はいつも火事が起きないか心配していた」。一戸建ての自宅を火災で焼失した御手洗孝雄さん(73)は、がれきに埋もれた自宅跡を見ながらつぶやいた。
 戦災を免れた別府市は、昭和初期に建てられた古い住宅が市街地のあちこちに立ち並び、土壁やトタン屋根の建物も目立つ。市消防本部も「今回の火災でも放水がトタン板に遮られ、消火が思うように進まなかった。まるで燃えている家が傘を差しているようだった」と話す。
 その上、路地は狭い。隣の家屋との間隔が数十センチ程度の場所も多く、延焼しやすい。今回は強風で火勢が強く、出動した22台の消防車両は建物の間の道に入り込めず、焼失した区画を取り囲むように放水を続けるしかなかった。

注意するしか…
 現場一帯は準防火地域に指定され、建物を新築する際は「建築基準法で外壁などを防火構造にするよう定めている」(市建築指導課)。しかし、古い木造家屋の大半は現在の防火基準を満たしていない。市幹部の1人は「住宅は個人財産であり、行政の防火対策には限界がある。最終的には住民の防火意識に掛かっている」と話す。
 これに対し、大分大学工学部の井上正文教授(建築・木質構造学)は「建築基準法上、問題がないとしても、既存の木造家屋が危険であることは誰の目にも明らか。行政は今後、改善を目指して防火に対する補助などを検討すべきだ」と指摘する。
 過去の教訓は今回も生かされなかった。
 「木造家屋が密集する南部地区では、いったん火事が起きると取り返しが付かない」。現場近くに住む女性(71)は、繰り返される規模の大きな火災に「まちの構造や家屋の問題は個人ではどうにもできない。とにかく一人一人が火元にならないよう、細心の注意を払うしか解決策はない」と、もどかしさを募らせた。

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