火事現場には白い花束があった。冷たい鶴見おろしが吹いていた=15日午後、別府市光町
黒焦げの柱、折れた水道管から水
水と煙の混じった火事のにおいは、まだ残っていた。別府市光町1区の一角を焼き尽くした大火から2日たった15日午後。炎が去った現場には、黒焦げの柱や灰混じりの土砂が大量に残された。黙々と土をかいて行方不明者を捜す警察官や消防士。人々が遠巻きに見詰めていた。
色消えた街に白い花束
色の少ない火災現場で、小さな白い花束を見つけた。前日、この奥で逃げ遅れたとみられる高齢女性の遺体が見つかった。「朝見たらあったよ」「誰が置いたのかねえ」。近くの人たちがささやく。亡くなった女性は身寄りがないようだった。温泉に入るのがささやかな楽しみだったという。
命こそあれ、家財道具を持ち出す暇もなく、被災者は着の身着のままで逃げ出した。「全部燃えてしまった」。焼け残った家の中で、腰をかがめていた男性(57)が、あきらめたように言った。しばらくして見つかった写真の束。ふちが焦げた“思い出”を、大切そうにポリ袋にしまった。
日常戻る日は いつに
見た目以上に、被害は深く、広かったことも分かった。火災のあった一角と道路を隔てた女性(48)の家は、火の手は免れたが室内はすすだらけで水浸し。漏電で電気が使えず、電話も通じない。しばらくは実家暮らしだが、「先のことを考えると途方に暮れる」という。現場に面した大きなマンションでも「ガラス窓が触れないくらい熱くなった。割れた家もある」と住民がこぼした。
少しずつ、復旧を目指す現場。一方で、折れた水道管が宙に向かって水を噴き出しているのは、火災直後と変わらない。つめ跡と呼ぶには、あまりに生々しい光景。火事の夜を思い出させる冷たい鶴見おろしが絶えず吹き抜ける。住民が日常を取り戻す日はいつになるのだろうか。
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別府市光町を中心に南部地区で13日深夜に起きた大火。被害は地域の暮らしを一変させるほど大きく、被災者は不安の中で過ごしている。火災現場からリポートする。
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