別府市 大火災

憩いの場、復活へ光 被災した「此花温泉」

[2010年01月16日 09:28]

火災に見舞われた此花温泉=15日、別府市光町の火災現場

 別府市光町の火災で全焼した民家の跡から15日、真っ黒に焼けただれた金庫が掘り出された。中には1300万円分の預金通帳。焼失した「此花(このはな)温泉」の改修費として地元自治会がこつこつ積み立てていたものだった。「この預金をもとに、1日でも早く温泉を再建したい」。温泉は地域コミュニティーの象徴といえる存在だっただけに、通帳の発見はすべてを失った住民たちに“希望の光”を与えている。

 温泉の利益や自治会費などをためた定期預金の通帳で、自治会の会計担当者が自宅の金庫に保管。この日、がれきの下から掘り起こし、バールなどを使ってこじ開けたという。
 同温泉は市が所有し、地元自治会が管理運営してきた。地区住民によると、昭和初期には既にあったという。1階が鉄筋コンクリート造りの温泉で、2階は木造の集会所(延べ174平方メートル)。狭い路地にたたずむ“秘湯”的な雰囲気が人気を呼び、住民を含め毎日300~400人が入っていた。

 30年近く温泉を掃除してきた近くの扈山(こやま)多美子さん(73)は「此花温泉は生活の一部。住民のオアシスだった」。地区内であれば月千円で何度でも入湯できたため、周辺には風呂のない家も多いという。
 通帳は焼失しても、火災に遭ったことが証明されれば預金を引き出すことは可能だが、「長年の地域活動の証しが形として残っていた」と住民。自治委員の星野隆昭(たかてる)さんは「温泉の建物は火災保険に加入していた。保険金と定期預金をもとに一日でも早く再建したい」と期待する。

 コミュニティーの場の再建を願う市民や企業からは「建設費用に充てて」と義援金が寄せられている。15日には、近くの三光電機が自治会に10万円を贈った。
 温泉があった敷地は幅4メートル以上の道路に面していないため、再建には建築基準法の規定をクリアしなければならないなどの課題はあるが、「みんなで協力して乗り越えていきたい」と星野さん。「温泉は癒やしの場であり、井戸端会議の場だった。早く再建しないとコミュニティーがなくなってしまう」と話している。

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