焼け残った危険な建物は解体されたが、がれきの撤去は手付かずのままの火災現場=10日午前、別府市光町
目印があるうちに
10日夜、別府市光町で起きた火災現場に面したマンション集会所。約30人の被災者や土地所有者が初めて顔をそろえた。「復興のためには、がれきを撤去しないといけない。そのためには、土地の境界線確認が必要です」。市を代表して出席した梅木武企画部長は要点から切り出した。
全焼22棟、焼失面積2800平方メートル―。光町の火災跡にはいまだ、がれきがうずたかく積まれている。今週初め、歩行者の危険を取り除くため、県建設業協会別府支部の協力で焼け残った建物を緊急に解体した。同支部は本格的ながれき撤去と運搬作業での無償協力を申し出ている。大きな支援だが、それでも被災住民の金銭的な負担はゼロになるわけではない。
市が法務局で登記簿を調べた結果、被災地の土地・家屋の所有者数は30を超えた。「隣の土地に家を建ててしまうようなトラブルを避けるには、住宅の基礎やブロック塀などはっきりした目印があるうちに境界を確定させた方がよい」と、市内の土地家屋調査士は説明する。
この費用は所有者の負担。また、がれきには「産業廃棄物」としての処理料も掛かる。総額は1千万円を超える。
確認していたのに
「今後の生活もある。お金のことは心配」。被災者の一人がこぼした。「土地境界線は確認していた。なぜ測量をやり直さないといけないのか」と疑問を持つ人もいた。しかし、「一日も早く復興を」という思いは同じ。約1時間半の話し合いの後、多くの人が負担を受け入れた。全員が同意すれば来週にも測量を行い、早ければ3月中の撤去完了も見えてきた。
感情的になる場面もあったという。「火事はそう経験することではないし、まして、後始末に幾ら掛かるかなんて誰も知らなかった。そんな不安が口をついたんだと思う」。自治会関係者は被災者の気持ちを思いやった。
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別府光町大火が起きたのは1月13日深夜。現地はいまだ“火災現場”。再建への歩みは緒に就いたばかりだ。間もなく1カ月。焼け跡から、立ち上がろうとする地域の姿を伝える。
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