2010おおいた参院選

順風・逆風(2) 投票の意義、識者に聞く

[2010年06月26日 09:52]

 参院選(7月11日投開票)は25日から期日前投票が始まった。報道機関の世論調査などによると今のところ有権者の関心は高いようだが、近年、若者を中心に国政選挙の投票率は低下傾向にある。投票や政治参加の意義について2人の識者に聞いた。
 大分県明るい選挙推進協議会の山崎清男会長(大分大学教育福祉科学部教授)は「昨年の政権交代以降のさまざまな出来事が政治的無関心や失望感を増大させ、投票率の低下を招くのであれば問題。よりよい日本をつくるのは自分たちとの思いで貴重な一票を投じてほしい」と呼び掛ける。
 政治解説者の篠原文也氏(豊の国かぼす特命大使、大分市出身)は今回の参院選を「民主党政権の中間評価をする大事な選挙。情報をうのみにせず自身の考えで選択することが欠かせない」と指摘。将来の有権者を育てるために「子どもと一緒に投票所へ行くと、親子で政治を考えるいい機会になる」と提案する。

県明るい選挙推進協議会長・山崎清男氏
社会よくする第一歩

 私たち一人一人は社会を構成する一員であり、その社会をよりよく発展させる役割を担っている。投票で意思表示をすることが、この役割を果たす第一歩であるといえよう。参政権は先人が勝ち取ってきた大切な権利である。この権利を行使する意味を十分に考える必要がある。
 昨夏の衆院選の結果、いわゆる政権交代が実現した。しかしその後のさまざまな出来事は、国民の間に政治的無関心や失望感を増大させたという指摘もある。そのことが、選挙の投票率の低下を招くのであれば問題である。しかし投票に行かなければ、そうした状況はよくならない。よりよい日本をつくるのは自分たちだという思いで、貴重な一票を投じてほしい。
 若者の投票率が低迷しており、どう上げていくかも課題である。投票に行かなければ次の社会を担うという意識も高まらないだろう。日ごろ接する学生の中には選挙への関心が低いものもいる。彼らにどのように働きかけ、選挙への関心を喚起するかが重要なことであり、彼らが持っているエネルギーをどうやって投票に向けるかが課題である。
 選挙に関する若者への情報発信の方策や、県外からの大学生らが投票しやすいような不在者投票のあり方など、若者の投票行動を喚起する環境整備を進めていく必要がある。さらに将来の主権者を見据えた、小中学生に対する取り組みが一層重要になるだろう。

 【略歴】大分大学教育福祉科学部教授。県男女共同参画審議委員、県社会教育委員連絡協議会長。兵庫県出身。

政治解説者・篠原文也氏
棄権するより白票で

 参院選は衆院選と比べて投票率が低くなりがちだが、今回は民主党政権の中間評価をする大事な選挙だ。有権者はメディアが流す情報をうのみにせず、自身の考えで選択することが欠かせない。街頭演説や政見放送を聞き、各政党のマニフェストを読み比べ、どの政党、候補者に託すのがいいか、判断してほしい。
 絶対的に支持できる政党や候補者はそうはいない。よりましなのは誰か、という現実的な選択も必要になる。選挙権は国民の権利であり義務。政治が信頼できないといった批判は、投票という義務を果たした上ですべきだ。投票したい候補者がいないなら、棄権ではなく白票を投じて意思表示してほしい。それが政治の緊張感にもつながる。
 投票率の向上も大きな課題だが、投票の質も一緒に上がらなければ意味がない。実現させるには主権者教育を推進し、子どもの時から政治に対する関心を高め、社会参加の意識をはぐくむ必要がある。例えば、米国の学校は大統領選挙に合わせて全国規模の模擬投票を行うなど、民主主義や選挙の仕組みを肌で感じさせている。こうした積み重ねが選挙権を得た時、投票意欲につながり、受け身の判断しかできない「観客民主主義」に陥ることも防ぐ。
 私はいつも子どもを投票所に連れて行き、選挙の現場を見せている。親子で政治を考えるいい機会になる。ぜひ多くの人に今回の参院選から実践してほしい。

 【略歴】日本経済新聞社政治部次長、テレビ東京解説委員を経て現職。豊の国かぼす特命大使。大分市出身。

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