2010おおいた参院選

視点・論点 県内の大学教授に聞く(中)

[2010年06月19日 10:33]

<地方自治>奥田憲昭・大分大学経済学部教授
資質の向上が不可欠

 政権交代後の鳩山内閣は“改革の一丁目一番地”の地域主権を進めるため、国が地方を縛る義務付けや枠付けを見直す「地域主権推進一括法案」を国会に提出した。継続審議になったが地域主権の理念や方向性を示したマニフェスト(政権公約)を具体化したものだといえる。
 地域主権が進めば自治体は知恵とアイデアを生かした予算編成、政策立案が容易になり、地方自治は大きく変わるだろう。
 民主党政権が設けた地域主権戦略会議は自民党時代の地方分権改革推進委員会の方向性を踏襲しており、「地方のことは地方に」という点では大きな違いはない。
 一括法案の内容に加え、(1)基礎自治体への権限移譲(2)ひも付き補助金の一括交付金化(3)国の出先機関の改革―も同時に行う必要がある。実現すれば自治体の裁量権は拡大し、自立度は高まるが、事務量と責任は大幅に増える。受け皿となる自治体を担う首長、議員の役割は飛躍的に高まるので、資質の向上が不可欠だ。
 道州制に関して自民党は基本法の早期制定を目指すなど積極的だが、民主党は比較的慎重だ。道州制は生活・経済圏の一体性が強い都市部と、大分などの地方とで効果が異なるだけに、十分見極める必要がある。

<子育て支援>佐藤慶子・別府大学短期大学部初等教育科准教授
子ども自身に視点を

 子ども手当などの子育て支援政策は親に対する支援であって、子ども自身への支援が進んでいない。子どもを取り巻く環境への予算を充実させる必要がある。
 例えば保育費、給食費など子育て・教育関連費用の無償化だ。県内でも保育料や給食費を払わない、払えない保護者が増えて家庭まで催促に行くケースもある。一番つらい思いをするのは子ども自身。まずは費用の最低限の部分を無償化し、すべての子どもが安心して豊かに成長できる環境を早急に整備すべきである。
 環境整備は少子化対策としても重要だ。出産、教育費用の心配がなくなれば、もう1人産もうと考える人は増える。教育費の軽減という意味で高校の授業料無償化は評価するが、最もお金のかかる大学では授業料が増える傾向にある。長期的視点で負担軽減を図るべきだ。
 幼保一元化で保育所利用の規制を緩和する動きもあるが、長時間保育が常態化するなら本末転倒。両親が定時に帰宅し、子育ての基盤となる家庭で子どもと多く時間を過ごせる環境づくりこそ大切だ。
 視点を親(大人)に置くのではなく、子ども自身の幸せのために何が必要かを考えるべき時にきている。

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