2010おおいた参院選

視点・論点 県内の大学教授に聞く(下)

[2010年06月21日 10:07]

<雇用対策>下田憲雄・大分大学経済学部長
育成産業明示すべき

 2008年末のリーマンショックから1年半がたち、景気が若干上向いてきたものの、雇用の改善には結び付いていない。完全失業率はこの10年間、5%前後にとどまったままで、日本の産業構造の見直しを含めた抜本的な対策が必要だ。
 雇用の安定を守るため、政府は労働者派遣法の見直しに動いているが、企業に正規雇用の増加を求めれば済む問題ではない。高い人件費を意識した企業が海外に生産拠点を移すといった動きも加速しかねない。
 政府に求められるのは、これからどの分野を成長産業として育てていくのか、ロードマップを国民に示すことだ。目指す経済規模といった具体的なデータに基づいた計画をまとめ、企業が雇用を拡大できる環境を整える必要がある。民主党は昨年の衆院選で内需主導による経済成長を掲げたが、内容が具体性に欠けていた。政府は内需、外需のどちらに力を入れるにせよ、資本投下する基盤産業を明示すべきだ。
 地方分権の流れの中で、都道府県による産業育成策を国がどう財政支援するのかも重要な課題。ひも付き補助金の一般財源化も議論されているが、地方経済を支援する効果的な制度づくりを進める必要がある。

<東アジア外交>吉松秀孝・立命館アジア太平洋大学アジア太平洋研究科教授
「共同体」の理念示せ

 東アジア外交のポイントは政治、経済両面で対外的な影響力を強める中国への対応にある。急激に台頭する中国が「責任ある大国」として振る舞っていくよう、日本として協力できることがあるはず。歴史的なあつれきもあるが、東アジア全体の発展をけん引するパートナーでありたい。
 東アジア共同体の実現に向けて、通貨危機に備えた資金融通協定など日本、中国、韓国のイニシアチブで経済産業分野での協力が具体化し始めた。日本としては、貧困や飢餓などの脅威から人々の生活を守る「人間の安全保障」といった方向性を示す「理念」の提案ができるとよい。
 安全保障では日米関係が最重要だ。日米同盟の存在は突出した覇権国の登場を防ぎ、東アジア地域全体の政治的安定に貢献する「公共財」ともいえる。仮に日本が独自に防衛費を伸ばすことになれば、周辺国に大きな緊張を生むおそれもある。
 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設問題をめぐる迷走が日米関係を悪化させたのは残念だ。外交には継続性があり、政権が代わっても簡単にはほごにできない。現実的な答えをどう探るか、政治には求められている。

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