川面から岸辺までホタルの光が波打ち、光の海を見ているようだとも形容される番匠川
番匠川は大分県を代表するきれいな川として知られる。佐伯市本匠は、その上流域にあたり、番匠川のおおもとであるとして旧村名に採用された地名。川は三国峠や佩楯(はいたて)山などの連嶺(れんれい)に発し、因尾(いんび)茶で知られた地域に流れ込む。この一帯がホタルの名所で、鹿渕(かぶち)辺りを中心に「ホタルの里」となり、散策路などもつくられている。
広範囲にホタルが出現することで知られ、ホタルの乱舞で川面から岸辺まで光が波打つようで、光の海を見ているようだとも形容されている。これほど広い範囲に数多くのホタルが姿を現すのは九州でもここだけだとも言うが、ここにもまた、住民のたゆみない努力があった。
ところで、番匠川をさらに下って行くと小半(おながら)鍾乳洞や日本一の大水車の架かる公園があり観光客が絶えない。そこでお気付きのことと思うが、先にホタルの名所として紹介した白山川にも稲積水中鍾乳洞があった。
鍾乳洞は石灰岩地帯にできるもの。つまり、白山川も番匠川も石灰岩地域を流れていることになる。大分県の南部を斜めに走る石灰岩の山並みの北と南にあるのがこの両河川である。石灰岩は濁りの少ない清流を生んでいるわけだ。
しかし、それだけではない。ホタルは川の中で幼虫として成長している間、カワニナを食物としている。そのニナは殻を作るのに石灰分が欠かせない。だから石灰岩地帯の川にはニナが多く、それがホタルにとって好条件となる。ホタルを養殖する場合、ニナを育てるのにコンクリートブロックなどを水に入れるが、両河川では自然がそれを用意しているわけだ。
なお、日本のホタルと言えば本州以南のゲンジボタルが代表で体長15ミリほどだが、大分県にはその半分ほどのヘイケボタルやヒメボタルもいる。
文 梅木 秀徳
写真 竹内 康訓
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