おおいた遺産

(82)白山川とゲンジボタル

[2010年05月31日 15:21]

乱舞するホタルの光が水面を照らす夜の白山川

 「山紫水明」は日本の風景の素晴らしさを端的に表す言葉であり、大分の山河の多くはその典型的な美しさを今に伝えている。それはまた、夏の風物詩であるホタルの乱舞する川が多いということでもある。中でも代表的な川とホタル名所は、ともに「おおいた遺産」に選ばれた白山川と本匠だろう。
 白山川は豊後大野市三重町を流れる大野川支流の中津無礼(なかつむれ)川中流部辺り。稲積水中鍾乳洞はじめ、ほげ岩などきれいな風景が川とその流域に見られ、日本の名水百選の一つである。百選は多くが湧水(ゆうすい)だが、川そのものが選ばれているのは珍しい。それだけ川が清いということだ。
 川は祖母・傾山群の傾山東北山腹に源流を持ち、大白谷(おおしろだに)を経て中津留地区に入る。この付近が白山川と呼ばれるところで、ふちとなったり瀬を見せたりして稲積山が水面に映る。
 川は古くから清流として知られていたが、それを「名水」にまで育て上げ、ホタル名所としたのは住民たちの努力だった。
 かつて全国的に農薬の大量使用などによって川が汚染され、昆虫や水生生物が危機にひんした時期があった。白山川にも、その心配が出てきた。
 そこで立ち上がったのが地域の300余戸の人たち。1974(昭和49)年に「白山川を守る会」を結成、以来、今日まで「川を守りホタルを救え」の活動を続けてきた。この間、第1回「日本の水大賞」の奨励賞を受けたほか、何度も表彰を受けた。
 本匠については別に紹介するが、ほかに大分県内のホタル名所として、県ホタル連絡協議会が選んだ河川がある。ホタルが育つ環境を守り、地域の振興に役立てようとの狙いで、大分市の七瀬川、別府市の朝見川、中津市の山国川、宇佐市の伊呂波川、日田市の小野川、竹田市の稲葉川など20余カ所がある。

文  梅木秀徳
写真 竹内康訓

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