今後の方向性について話し合うメンバーら。奥は西日本や海外から届いた“大地の素”の松ぼっくりや落ち葉=福島県二本松市本町商店街
福島第1原子力発電所事故の放射性物質におびえず、子どもたちが安心して遊べる場所を福島県二本松市につくる「屋内の大地」プロジェクト。中心市街地の空き店舗を改装した遊び場は、淡い茶色や緑、黄土色など、アースカラーに塗った木枠の中に、落ち葉やドングリ、松ぼっくりなどが置かれ、洗練された空間に仕上がっていた。
「伊勢神宮のイチョウは御利益がありそうだし、屋久島の葉っぱは大きい。あれは米国・ボストンの落ち葉。日本にはない葉っぱの形」。同プロジェクト代表で建築家のアサノコウタさん(28)=福島市=が、屋内の大地を埋める“大地の素(もと)”を一つ一つ説明した。大地の素はプロジェクトの呼び掛けで西日本の各地や海外から届き、全て放射線量を測定して使っている。
竹まりも手渡す
アサノさんには、テオ・ヤンセン展の砂のほか、別府竹細工を継承する三原啓資さん(43)=別府市=から託された竹まりを手渡した。「電力会社から脱サラして竹細工の道に飛び込んだ。それだけに福島の復興には、思いがある」という三原さんの言葉も伝えた。
アサノさんは竹まりをボストンの落ち葉と並べて置いた。「どうですか、大分とボストンのコラボレーションはいい感じです」
屋内の大地は1月にオープン。安心して遊べる場所を求めて多くの子ども、母親たちがやって来る。震災後に生まれた生後8カ月の赤ん坊はここで、生まれて初めて落ち葉に触れた。
「逃げたい。でも」
アサノさんと一緒に活動する印刷業の松本太(41)さん=二本松市=には、高校2年と中学2年の子どもがいる。「逃げられるものなら逃げたい。でもね…設備投資した工場もある。ここが私の暮らす場所です」
震災発生時には、消防団員として火災現場に駆け付けた松本さん。「私たちはまだいい。福島県内でも原発に近い浜通りは強制避難です」と、原発事故の影響をより大きく受けている被災者を気遣う。近く、浜通りにある浪江町の親子を招いて子育て祭りを開くことにしている。
放射性物質による汚染の真っただ中にある浪江町は、仮役場を二本松市内に置く。福島県内で太平洋側の地域を指す「浜通り」に向かうことにした。
(「テオ・ヤンセン展」実行委員会事務局長・編集委員 佐々木稔)
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